技術広報モエです。

 

今回は、リーマンサット・プロジェクトの人工衛星、RSP-00の放射線試験に同行しました。

・・・・と言いたいところですができませんでした。なんでかって?

社畜だから!そんなに何回も有給とれないんですよ!!!(><)

(こういった試験施設はだいたい平日しか利用できません)

そういうわけで、シリーズ早々「文系女子が人工衛星開発を追いかけてみた

(けど現場には行けなかった)【放射線試験編】です。

 

放射線試験。なにやらモノモノシイ感じがします、、、

放射線試験はなんのためにするかというと、「RSP-00が宇宙空間で放射線に耐えられるかどうか事前に確認するため」だそうです。

ふーん・・・?宇宙空間だとなにか違うんですか?

リーマンサット・プロジェクトの技術部の人(以下略して技)「宇宙って地球となにが違うと思いますか」

モエ(「以下略してモ)「うーん、、、、空気がないとか?」

技「そうですね。RSP-00のような人工衛星にとって、『空気がない』宇宙環境は

地球とは違う困りごとがあります。」

モ「えっなにか問題あります?RSP-00は呼吸しないですよね??」

技「宇宙空間には放射線が飛び交っています。地球は大気や地場が傘となって

放射線から守られていますが、宇宙空間はその傘がないため宇宙放射線をそのまま浴びてしまいます。」

モ「だめなんですか、浴びたら」

技「程度によりますが生命体や電子機器に有害です。」

だめなのか・・・。

技「宇宙空間に耐えられると思われる機器を使って人工衛星を作っていますが、

念のため、打ち上げ前に『放射線実験施設』で宇宙環境と同じような放射線照射を行って、

機器が放射線のダメージに耐えられるかどうかを事前に試すんです」


なるほど。少しわかってきたような気がします。富士登山の前に高尾山に登っておく、

みたいな感じでしょうか。
(関東以外の方すみません。高尾山は東京都八王子市にある標高599mの山で、

ハイキングや遠足などに人気があります)

 

ちなみに、先日の振動試験とは違って、今回の放射線照射試験は必須ではありません。

宇宙空間へISSから放出されたあとの環境についての試験なので、JAXAに試験データを提出する必要がないからです。

 

リーマンサット・プロジェクトの一行が向かったのは、東京工業大学、大岡山放射線実験施設。

卒業生にきくと「近くの木には毛虫がつかない」「池に三ツ目のデメキンがいる」などの

都市伝説があったそうです。そんなわけあるかい笑。実験施設ですからきちんと管理されています。

施設の中です。
台座の中央に見える円筒が放射線源です。この台座に試験用の電子機器を設置します。

この黄色い分厚い窓の向こうから、こちら側を観察することができます。

ちなみにこの黄色は、長年の放射線の影響でこの色になってしまったそうです。

けっこう黄色い。

 

今回は以下の条件でテストを実施しました。

照射距離:80cm

照射時間:11:50~16:50

放射線源から0~80cm程まで距離がとれるようになっており、距離と照射時間により機器への照射換算を行うことができます。

尚、3m程離れると機器にはほとんど影響がなくなるそうです。

放射線源が設置されている部屋と外部は50pinケーブルでつながっており、室内だけでなく外部で計測機器(PC等)を接続することが可能となっています。

 

計測する機器の調整やはんだ付けを、現地で行っていたこともあり

準備に時間が掛かってしまったようです。

回路を組んでから試験をしたのですが、その組み方も次回への課題があったとのこと。

技術部の各系が、各々計測したい機器を持ってきました。

通信系:通信基板

電源系:電源基板

C&DH系:C&DH基板

ミッション系:ミッション基板

うん、みんな基板ですね。搭載機器だからあたりまえか。

 

試した内容はこちら。

通信系:AFSKのデータを出力

電源系:C&DHへの接続し電源供給

C&DH系:FRAM,9軸センサのデータ出力

ミッション系:カメラデータの出力

着々と準備が進んでいます。

・・・・ん?・・・・・

あれ?なんか基板じゃないものが載ってませんか?

 

 

準備が完了したので放射線照射開始です。

放射線源が設置されている部屋の外から。やっぱり黄色いモノが見えますね・・・。

 

試験終了。バナナの見た目に変化なし。

線源から距離を変えて2本置いたのですが、どちらも見た目に変化なし。

 

 

左から、放射線源の近くに置いたもの、遠くに置いたもの、放射線照射しなかったもの。

変化なし、むしろ放射線照射しなかったものが少し黒ずんでいる。。。

 

・・・・あっ、バナナの試験をしに行ったわけではないのです。

RSP-00に詰めて持っていくわけでもありません。試験に行く人に「何か技術広報から持っていきますか」って聞かれたので、

放射線照射してバナナの色が変わったりしたら面白いな~と思って、ノリでもっていってもらいました。照射したらバナナの皮が褐変するという古い論文も見たんですが、条件が違ったんでしょうね。まったく変化なしでした。

余談ですが、宇宙日本食開発時に、食品に対する放射線照射を使っての

放射線殺菌が検討されたことがあるらしいのですが、日本国内では

食品衛生法第11条で放射線照射による製造販売が禁止されているため

断念された・・・という事例があるそうです。興味がある方は調べてみてください。

 

では話を戻して試験結果です。

 

通信基板:使用不可、FLASH破損の可能性あり。追加試験予定

電源系:異常なし

C&DH系:異常なし

ミッション系:異常なし

 

まあ、想定の範囲内といったところでしょうか。

試験参加者一同、ホッと一息ついて帰途についたようです。

 

!?

それおやつに持たせたわけじゃないですよ!?

 

技「みんなで食べ比べしました」

食べ比べ!!!

技「軌道400km想定の放射線113年分照射しても味変わらないですよ」

チャレンジャーですね。おなか痛くなっても知りませんよ・・・・・

技「残留放射能がないことはガイガーカウンターにて確認済みです」

ガイガー?なんですか?
技「放射線測定器です」

 

バナナの放射線試験もノリでやっちゃうリーマンサット・プロジェクトを、今後もよろしくお願いします^^

 

 

 

【この記事を書いたメンバー】

技術広報もえ
趣味は宇宙開発と阿波踊り
好物はビールと焼肉


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