『自撮り衛星』リーマンサット・プロジェクトの超小型人工衛星「RSP-01」(愛称 Selfie-sh)は、2021年2月に国際宇宙ステーション(ISS)に届けられたあと、3月14日にISSから地球に向けて放出されました。人工衛星は宇宙空間で地球の周りを回り続けることだけが仕事ではありません。

わたしたち人工衛星開発者が宇宙空間で人工衛星を使って実現したいことをミッションとして背負っており、そのミッションを達成するのが任務です。90分に1回地球を高速で回りながら、地上にいる開発者&運用者とコミュニケーションをとりながらミッションを果たす「RSP-01」の本格的な活動が衛星運用によって始まります。

運用が開始されてから早くも半年、6か月!今回は、衛星運用がはじまっても山あり谷ありということで、運用が始まった3月から9月までの運用経過についてレポートします。

< Presentation materials created by  瀧本辰一(RSP-01 通信系)、Reported & text by Sahoko Kito(技術広報課&RSP-01)>


人工衛星運用の経過報告(2021年3月から9月まで)

さて、こうして始めた衛星運用ですが、地上で試験を繰り返しながら入念に開発をしてきたとはいえ、宇宙空間という特殊な環境で想定外のトラブルはおきるものですし、かつ何かエラーがあっても修理にいけないため、地上局側で全て解決しなければいけません。「RSP-01」がミッションを着実に達成していくのは、やはり簡単ではありませんでした。

これは素人が作った人工衛星がということではなく、打ち上げられている他の人工衛星の運用報告をみても思うのですが、地上でできる限りエラーを想定し検証しながら開発しても、思ったとおりに運用するのはなかなか難しいようです。

まず、放出日にCWビーコンの音が聞こえたのはいいのですが、すごく弱々しい声でした。一緒に放出され、同軌道にいる他の人工衛星たちの声と比べて弱すぎる・・・。データ取得のためのコマンドの通りも悪いのではないか・・・。いったいどうした「RSP-01」!

アンテナがうまく展開できていないのでないか、通信機に問題があるのではないか等、いろいろな議論を重ねました。運用を重ね、世界のアマチュア無線家からの受信報告も参考にしながら、通信不良改善のために、データの収集と解析、レビュー、次の運用での検証とあらゆる解決方法を追求します。

そして通信系の開発者がダウンリンク送信機の切替えという提案を行いました。実は、「RSP-01」は10センチ角という超小型のキューブサットながらも、アップリンク用受信機1台、ダウンリンク用送信機2台となんと3台もの小型の通信機を独自に開発して搭載しています。「こんなこともあろうかと」と予備の送信機を搭載していたことが功をなしました! そして冗長系と呼ばれる2台目の送信機に切り替えたところ、力強いCWビーコンの音が聞こえ、データが確実にとれるようになったのです。

 

RSP-01応答せよ!

そして、通信が復旧したあとは、改めて健康診断的な各機能確認を行い、4月半ばにはいよいよ「RSP-01」のメインミッションである、「宇宙で地球を背景に自撮り」をするというミッションが始まりました!

特に4月末から5月の連休は、サラリーマンにとって運用できる時間がたくさんあったため、自撮りによる写真撮影だけでなく、リアクションホイールを動かして姿勢制御機能の検証を行ったり、撮影した写真の画像認識などミッションとサブミッションを次々と実行していきました。

そして、普段は「こちらRSP-01・・・」と自己紹介的なCWメッセージを送信しているのを、5月5日の子供の日にあわせたスペシャルなCWメッセージを送って、アマチュア無線家に楽しんでもらうといったこともしてみました。

5月下旬には、撮影した写真のサムネイル画像からフルHD画像で落としたい「この1枚」をメンバーによる投票で決めて、6月はフルHD画像データをこつこつとダウンロードしました。

このメインミッション達成についての詳しいお話は、次回の【ミッション達成!宇宙で自撮り:こちら人工衛星RSP-01(前半期レポ)】でレポートします!

そして9月現在の運用状況はというと、フルHD画像をこつこつと落としていた6月半ばに、突然「RSP-01」のCWビーコンの音が聞こえなくなり、コマンドを送っても応答が確認できなくなりました。先の通信不良の時と同じように改善のために、運用を重ねながら、原因追及に向けたコマンドを打ち、あらゆる解決方法を追求しています。

7月半ばと8月始めにCWビーコンが一時的には確認できたのですが、その信号はとても弱く、衛星情報の確保ができていない状況です。

今は、衛星搭載のものと同等の部品を使って、エラーが起きる原因とその解決方法の検証も行っています。

次の運用で衛星情報がとりたい!という思いとともに、原因追及のための検証と運用計画そして継続した運用が大事な時期です。みなの思いを載せた「Selfie-sh」なので、またこれを乗り越えられるはず!と信じています。

引き続き、応援よろしくお願いします!

※現在、RSP-01がどこにいるかという追跡情報は、以下のRSP-01運用サイトでも常時ご覧いただけます。

https://www.rsp01.rymansat.com/

 


そのまた未来へ、RSP-01プロジェクト、まだまだ新たなチャレンジを続けています!

宇宙デビューしたRSP-01運用メンバーも募集しています。参加についてはこちらから。


【この記事を書いたメンバー】

Sahoko Kito
広報部 技術広報課長、技術部RSP-01プロジェクトC&DH系、人工衛星運用オペレーター。
趣味は宇宙開発、宇宙教育、星空案内、美味礼賛。7つの海を渡るのが夢。


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