2024年打ち上げを目標とする超小型人工衛星「RSP-03」の開発を開始しました。
2018年に打ち上げられたRSP-00(零号機)をはじめとし、2021年に打ち上げられ運用中のRSP-01(壱号機)、現在開発中のRSP-02(弐号機)に続く、リーマンサット・プロジェクトでは4機目の人工衛星プロジェクトとなります。(リーマンサットの人工衛星についてはこちら

リーマンサットでは、新しい人工衛星を製作するごとに、新規ミッションを募集し、新規プロジェクトをゼロから立ち上げます。
2021年の9月から12月にかけて開催されたミッション検討会において、新規性/技術面/コスト/話題性/趣味性/法律面等を検討し、多数のアイデアから最終的に決定したミッションは、「星のシンフォニー スタートラッカーで奏でる宇宙音楽」です。

(トップ画像クレジット:NASA)

「RSP-03」のビジョン

宇宙に瞬く星々のかっこいい音色をオーケストラやジャズのような多重音のシンフォニーとして地上の人たちと楽しみたい!
というのが、RSP-03のビジョンです。

宇宙は真空のため音が聴こえない世界ですが、人工衛星を使って音を地上に届けることはできます。いわゆる放送衛星は、地上の音楽を人工衛星を使って世界に発信していますが、宇宙空間にいて目の前にひろがる宇宙空間と星々を眺めながら作曲し、その音楽を地上に届けるということができるのは、今のところ宇宙飛行士が滞在している国際宇宙ステーション(ISS)くらいではないでしょうか。

2021年の東京オリンピック2020の閉会式で、フランス人の宇宙飛行士が次期オリンピック開催国である母国フランスパリに向けて、ISSのキューポラからフランス国歌をサックスで演奏した映像は、特に印象的でした。音のない宇宙から地球を回りつづける人工衛星ISSから音を伝える。

音楽は言語や国境もそして地球と宇宙の境さえ超えるユニバーサルなものであるということが感じられた瞬間でした。

10センチ角の小型衛星であるキューブサットでは、演奏家や楽器を載せることはできません。

しかし、人工衛星自身が作曲家や演奏家になることはできます。

さらに、90分に一回地球つまり世界の上空を飛び回り続けています。

そして宇宙や人工衛星に興味がない人以外の幅広い人にも、音楽をとおして宇宙を感じてもらいたい。

「作曲する人工衛星」であるRSP-03が、宇宙空間で飛び回りながら見つめてきた星々(一等星や星座や月や地球など)、そして自ら人工天体(衛星)であることを音として紡ぎ、奏でる音楽を、地上の人たちが耳をすまし楽しんでもらいたいとの想いがあります。

credit: YouTube

星のシンフォニーとは

多くのキューブサットは、CW(モールス信号)というシンプルな発信音でこちらRSP-01・・・といった自らの名乗りやCWメッセージをかわいらしくさえずりながら、地球の周りをまわっています。RSP-03では、キューブサットであっても、ガガガ、ピピピといった音だけではなく、様々に異なる音の要素が交わり、かつ一体感のある「シンフォニー」としての音楽を地上に届けたいと思っています。

そして、シンフォニーのイメージ音楽は、ベートーヴェンの交響曲第9番の最終楽章「歓喜の歌」です。

いきなり第九か!とずいぶん高みを持ってきたように思われるかもしれません。たしかに私たちはベートーヴェンになれるわけでもなく、音楽専門家でもありません。

ただ、どのような曲を届けたいのかということを考えた時に、第九という音楽は、
①誰にでも馴染みがあるメロディー ラインを持っている
②共通の言語政策を持たない欧州連合(EU)があえて歌詞をつけない曲として第九の旋律のみをコミュニティ(国家を超えた共同体)歌としている
③何かが終わり統合や新しいものが始まる時によく使われる曲である
④そして、多くの編曲や楽器バージョンが星の数ほどある
というように、多くのことを語れる要素があり、そして地上の人たちが楽しめる「シンフォニー」として象徴的な意味を持っていると思います。

RSP-03では、第九を流すわけではなく、宇宙にいるRSP-03が自ら得た「星」の要素をもとに第九のように親和性のあるシンフォニーを作曲、演奏したいと思っています。

 

「RSP-03」のミッション

「RSP-03」のミッションには、人工衛星製作するにあたり、ソフトテックとハードテックの2つの方向性があります。

・星のシンフォニー:作曲演奏家としての人工衛星[SoftTech]

まず、最低限達成すべき(ミニマムサクセス)ミッションを「宇宙の星々を撮影し、取得データを音に還元し、オーケストラやジャズのような多重音のシンフォニーを形成する」という今回の方向性から、以下のように決めました。

①スタートラッカーなどを装備し、1等星「シリウス」や星座「こぐま座」、月、地球といった星や星座のデータを取得する。
②取得データを等星や距離などにより要素分類し、作曲(コンポーズ)して、音楽データとして地上にダウンリンクする。

この2つを達成することで「星の要素から曲を生成して宇宙から地上に送信する機能」の達成を目指します。

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次に、本命のミッション(フルサクセス)は以下のように決めました。

③オーディオで人工衛星から直接ラジオ送信する。
④ダウンロードした音データを地上で編曲、可聴化 (ソニフィケーション)する。

宇宙の星々のデータを可聴化(ソニフィケーション)するということについては、先行事例として、NASAが宇宙望遠鏡で得られた「天の川銀河」などのデジタル画像データを音に変換したものがあります。

RSP-03はキューブサットなので、ここまで壮大なスケールの音データをとることは難しいですが、取得した星のデータをどのように要素分解し、音に変換して可聴化(ソニフィケーション)できるかということにチャレンジしたいと思っています。

credit: NASA

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最後にエクストラサクセスミッションとして、

⑤作曲した音楽をコンサートホールで演奏するなど、「作曲演奏する人工衛星」が得た音データや音楽を展開していくこと

です。ここまでくると、宇宙×音楽×人工衛星を愉しめる企画を打ち出せます。

・星のシンフォニー:バスシステムの完成[HardTech]

そしてハードテックな開発においては、内製化したバスシステムを完成し、次次号機RSP-05以降に開発する人工衛星を1U以下でユニット化していきたいとのビジョンがあります。そのため、RSP-03の開発のミッションとしては、これまで製作してきた3機の人工衛星開発の遺伝子を引き継ぎ、1Uとしてのバスシステムの完成を目指しています。

リーマンサットでは、RSP-00、RSP-01、RSP-02とそれぞれ独立した人工衛星プロジェクトで開発してきましたが、どの人工衛星もリーマンサット・プロジェクトメンバーがつくりあげた「星」です。

各プロジェクトのメインミッションこそ次号機に引き継いでいませんが、それぞれで開発してきた技術や知見は次の星である次号機に引継ぎ、新たな星をつくり続けています。

今回、RSP-03の技術開発における新たなチャレンジのひとつは、姿勢制御のために「スタートラッカー」を搭載し、実証すること。人工衛星のカメラで撮影した星空から星の分布を推定し、それと星図との比較から人工衛星がオリオン座の方向を向いているのか、北斗七星の方向を向いているのか等をもとに人工衛星の姿勢と位置を確認します。ここで得られた座標データを「音楽」を生成する星のデータとして利用するため、SoftTechのメインミッションと連動した大事な開発でもあります。

さらに人工衛星の心臓ともいえる電源を確保するため、より多くの太陽電池セルを配置する展開式パネルの実装もミッションの一つです。

 

「RSP-03」の開発チーム

RSP-03プロジェクトの開発チームは、開発する目的により11系統に分かれて活動しています。リーマンサットのメンバーは本業が忙しい社会人が多く、ライフイベントも大事にしながら趣味で開発しています。そのため、できるだけタスクを振り分けながら、開発を進めています。ただし、全ての開発系が結合してひとつの人工衛星が制作されるため、常にone for all, all for oneと意識してはいます。ただ、開発しながらも系横断的な検討事項もでてくるため、ソフト系、エレキ系、メカ系と系を横断するエンジニアグループもあります。

さらに、技術的な開発グループだけでなく、技術的な開発の基盤となる広報活動や資金調達のために、外部公開系とファンディング系も新たにつくりました。

開発メンバー絶賛募集中

まだ開発は始まったばかりです! すべての系でメンバーを絶賛募集中です。

プロジェクトチームメンバーは全員「宇宙開発者」です。多くの開発チームで自分はここをやってみたいという系をみつけて、是非一緒に宇宙開発をしてきましょう。

 

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リーマンサット・プロジェクトでは夢や好奇心から始まる”人を中心とした宇宙開発”を目指しています。

現在では人工衛星開発だけではなく、月探査ローバーの開発もしています。

引き続き広報メンバーも募集中!是非皆さんで宇宙開発をしていきましょう☆

参加する


【この記事を書いたメンバー】

Sahoko Kito
超小型人工衛星RSP-03プロジェクト プロジェクト・マネージャー
趣味は宇宙開発、宇宙技術広報、星空案内、美味礼賛。7つの海を渡るのが夢。

 


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