技術広報モエです。
開発も大詰めにさしかかったRSP-00の、振動試験にいってきました。
文系女子がのぞいた、リーマンサット・プロジェクトの宇宙開発の現場をお届けします!

本題の前に、振動試験とはなんぞや、という方のために!
振動試験とはその名の通り「振動する台の上に試験したい物を載せ、その物が振動に耐えられるかどうか試す」という試験を行うことです。
なぜ行うか?
今回、RSP-00はJAXAのロケットを使ってISS(国際宇宙ステーション)へ運び、そこから宇宙空間へ放出してもらいます。RSP-00自体がロケットの激しい振動に耐えうるものでないといけないし、壊れることでほかの荷物に損害を与えることも許されません。
「この人工衛星は、ロケットに載せても大丈夫ですよ」と証明しなければいけません。
JAXAからも、振動試験のデータは提出を求められます。
ロケットで打ち上げる以上、振動試験は必須なのです。

某日某所、はじめての振動試験体験にどきどきしながら待つわたし(文系女子)の前に現れた熱構造系リーダーT氏。なんだか硬い表情です。
T氏「悪いニュースです。Mさんが体調不良で来られなくなりました。我々二人だけで、今日は何とかする必要があります。」
えぇぇぇ。。。今日はカメラマンのつもりだったんですが・・・そんな顔しないでください。わたしのほうが不安です…

 

試験場へ向かうと思いきや、フリースペース的な休憩コーナーへ。

 

なにやら殺傷力の高そうな尖ったものと、銀色の板を渡されました。
モエ「これ、なんですか?」
T氏「このやすりで真ん中下部の穴を広げてください。」
モエ「えぇぇぇぇぇ。これ【やすり】なんですか?!やすりは紙やすりしか見たことないです。無理ですぅ・・・」
T氏「柔らかいから大丈夫ですよ。時間ないので早く!」
あ、確かにこの銀色の板、アルミだからか柔らかく、思いのほか簡単に削れます。おっかなびっくり削っていると、熱構造系リーダーT氏から「もっと思い切って削って大丈夫ですよ!」の指示が。
ところでわたし、いまなんの作業しているんですかね?
T氏「太陽光パネルのコードを通すRSP-00のフレーム側の穴が微妙に合わないことが発覚しましたので微調整です」


こんな感じでごりごり削ります。
穴あけ作業が終わったら太陽パネルを取り付けます。時間がないのでわたしもお手伝い。文系女子モエ、あんまりドライバーとかさわったことがないのでモタモタモタモタ…
T氏「太陽光パネル触るときはビニール手袋装着してください 」
「あっ、はい」
それまでごりごり削ったりと雑に扱っていたけど、太陽パネルが付くとグッと精密機械ぽさが出てきました。
と、T氏が試験場の受付にいってしまいました。
置いていかないでぇぇぇぇ・・・
と思いながら慣れぬ手つきでまたモタモタとねじどめ。無事コードを内側に通し、フレームに太陽光パネルがとりつきました。いえい。


では試験場へ参りましょう!

じゃーん!
試験治具に取り付けたところ!

試験治具とは、人工衛星を振動試験用の加振台へ取り付けるための部品です。この下面の分厚いパネル(25mm)と、少し見づらいですがRSP-00の外側にある銀色の箱、あと映っていませんがフロントパネルで構成されています。JAXAから「こういうものを使ってね」と貸与された資料をもとに、リーマンサット・プロジェクト自ら作成しました!

治具を加振台にとりつけ、RSP-00を設置。いよいよ試験開始ですね、リーダー!・・・・リーダー・・・?

なんだか浮かない顔をしています。

 

あっ。小型衛星放出機構を模したバネ(画面真ん中)をとめるネジが大きすぎて太陽光パネルに当たっています。
このままでは太陽光パネルに干渉してしまい、正しい振動試験のデータが取れません。

どーするT氏。
T氏「この面の太陽光パネル、はずしましょう」
(えぇぇぇぇぇ。頑張ってつけたのにーーーーーーー・・・)の心の声もむなしくさっさとはずされる太陽光パネル。
T氏「そこ押さえててください。そうそう。あ、レンチの使い方逆です。」
どんどん指示が来ます。加振台に取り付けたままの作業、ちょっと手が届きづらくて大変…!
T氏「そちら側からもネジ止めしてください。そのネジです」
はいっ。こちらもだんだん作業に慣れてきました。

そのあと数か所調整して、最終的に5枚あった太陽光パネルは今回3枚での試験となりました。ちょっと残念。

高価な工具を手にして嬉しそうなT氏。

RSP-00に、加速度センサーを取り付けます。

太陽光パネルにテープをつけ、接着剤で加速度センサーをつけました。
いよいよ、いよいよ試験開始ですねリーダー。リーダー・・・・・?
T氏「加速度センサーのコード、こうなってたか・・・蓋の、コードを通す穴の位置が小さい・・・」
モエ「確かに。」
1枚前の写真と見比べてください。確かに、小さい。
横の細い溝からコードをにがすことも検討したのですが、振動試験中にコードが切れる可能性が高く、またこの加速度センサー自体結構なお値段のするものなので弁償するのもちょっと辛い、となって、今回は蓋を使わず試験することになりました。
いよいよ振動試験ですが、振動試験自体は非常に短い時間で終わります。
1分のホワイトノイズ、1分のランダムノイズ(ロケットの振動)、1分のホワイトノイズ、で1セットです。
ランダムノイズの前後にホワイトノイズをかけることで、衛星の振動の特徴のデータを取ることができます。

振動試験の動画をお見せしようかと思ったのですが、これが非常に地味でして・・・
・そんなに振れ幅がない
・20~2000回/秒 の振動のため、目視では揺れがわかりづらい
わくわくと動画を撮ったのですが、揺れてるのかどうなのか全然わからない・・・・・。
ので今回は割愛します。

試験が終わり、太陽光パネルを外されたRSP-00。
お疲れさまでした!

安堵のあまり、データの入ったフラッシュメモリーを忘れて試験場を出てしまう案外うっかりさんなT氏でした(笑)

RSP-00資料よりちょっと出しです。
この表はJAXAから指定された条件データの表です。このデータを試験場にわたして試験してもらいました。
HTVと書かれている表のところのデータです。

今回、フレーム作成の時間不足の影響で治具の調整等うまくできておらず、また時間切れで水平方向の試験ができませんでした。残念。
でも垂直方向のデータは取れました!また目視で太陽光パネルの破損がないことも確認できました。
よかった。

「試験の前の確認」の意味合いもあった今日の試験。次回の振動試験までに今日出た課題の解決と治具の修正を行うとのことです。

リーマンサット・プロジェクトでは、通信機以外は基本的に自分たちで作ります。外注していません。
治具も自分たちでゼロから作っていますので、細かい修正もすぐに対応できます。頼もしい。

宇宙開発といっても、そばで見ていると一つ一つのしごとは特別なものではなく、地に足がついたものでした。
「わたしでもできるかもしれない・・・」そんな感想を持ちました。

次回の試験ではいよいよ内部機器も搭載して振動試験を行うとのことです。
打ち上げまであと少し。楽しみですね!

【この記事を書いたメンバー】

技術広報もえ
趣味は宇宙開発と阿波踊り
好物はビールと焼肉


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