こんにちは、超小型衛星RSP-03チームです。
「ハモるん開発記」では、リーマンサットでの衛星開発がどのように行われているのかを、ハモるんことRSP-03の開発各系ごとにご紹介します。
「ハモるんって?」「”系”って?」という疑問があるかたは、文末へどうぞ!

前回の進捗報告はこちら→ハモるん開発記:超小型衛星RSP-03進捗2024年7月

2024年8月のハモるんと03メンバー

RSP-03の開発もいよいよ終盤へと差し掛かり、8月は「安全審査の最終調整」「FMでの実評価準備」「各系最終実装・デバッグ」といった作業が中心となりました。
それでは、2024年8月の各系進捗です。

PM系(プロジェクトマネジメント)

●安全審査:JAXAからのコメントに対応し、Phase3 SFCB(構造関係の審査)が完了。安全審査の最終クローズを待つ状態。
●宇宙活動法:内閣府へのコメント返答済み。
●引き渡しスケジュール:11月初旬のJAXAへの引き渡しに向け、各フェーズの開発日程を更新。
〇9月中旬:全系機能実装完了
〇~10月中旬:EM*1(テストベンチ)で統合評価、FMへソフトウェア書き込む
〇~10月下旬:FM*2を使い総合評価&長期運用試験
〇11月:引き渡し
●EM,FMでの統合評価
-長期運用試験:1週間電源を入れぱなしでEMでC,T系のタイマー動作の確認
-電力収支のチェック:テストパターン(T,M,A系)を定義して、その動作における消費電力をみる。テレメ、実測込み
-異常検知のしきい値の確認:電圧値、電流値、温度等の異常判定しきい値を誤判定にならないように実験で確認した上で決定する

*1:開発に使用する試作機のことをEMと呼ぶ。エンジニアリングモデルの略。

*2:実際に宇宙へ放出されるモデルのことをFMと呼ぶ、フライトモデルの略。


テストベンチ。

M系(ミッション)

●HKデータの値(温度、電流、電圧、角速度)に応じてモチーフの音程をかえる処理をテスト。
●作曲処理:88星座分の実装完了。
●残課題:ハウスキーピングデータに応じた作曲、撮影時の姿勢安定(Stabilize)化処理、画像処理による演奏判定。
●SSTV画像送信でノイズ、遅延発生。

〇SSTVが送信途中に切れる
〇SSTVの再生が始まるまでに遅延が5-10秒ほどある。キャリアはすぐに出るが、SSTVの変調がかかるまでが遅く、T系でタイムアウトしてしまい、送信完了前に送信が止まってしまう。以前より遅延が増えている印象がある。

C&DH系(コマンド&データハンドリング)

●AOBC(姿勢制御系OBC)の初期化コマンドを追加実装。
●COBC(コマンド系OBC)-AOBC間の動作検証を進行。

T系(通信)

●本番想定(衛星⇄地上局)の通信系適合性試験開始。
●AFSK1200通信の問題:soundmodemを使った運用回避策で問題なしと判断。
●SSTVでのダウンリンクで画像のノイズが酷い(高解像度モードのPD120でQRコードが読めない)が、これはM系RaspberryPi Linuxのオーディオミキサが悪さをしていることが原因と特定。ミキサをバイパスして出力することで回避可能。このため、音声出力系はデータを96kHz 16bitステレオに変更する必要あり。(2024年8月時点では96kHz 16bitモノラル)。出力形式の変更をM系と調整中。
●デジトーカにも同じ影響が出ている可能性があるが、耳で聞く限りではわからないので、一旦現状のモノラルのままで行く。

P系(電源)

●バッテリーの充放電制御プログラム実装を再開。デバッグ中。

A系(姿勢制御)

●StabilizeコマンドはA系単体では動作確認済み。E2E試験での動作確認を優先項目として実施予定。
●一部機能はドロップ前提で整理。
●コマンド送信用の地上局側対応も必要。
●シャットダウン処理の実装。リアクションホイールの姿勢制御は電力消費が大きいため、電源を落としていく際に、ソフト側の終了実行してからハードウェアの電源を切るようにしている

H系(熱・構造)

●11月に行う「RSP-03技術講演会」の打合せを実施。
●クラウドファンディングの返礼品用に+X面のデータを作成。難航。

G系(地上局)

●G系は衛星の運用が始まるまで開発を進めることができるので、今のところ開発を断念する機能はなし。
●運用システムの実装継続中。
●地上局用PCの環境構築方法の検討(Docker化、現環境のバックアップ対応など)
●OQPSK/4FSKのデコードについても調査進行中。
●T系基板から送信したAFSK信号を地上局設備で受信したところ、ハードウェアTNCでデコードできなかった。T系とともに調査中。

D系(デザイン)

●「RSP-03技術講演会」の大テーマを「人工衛星をデザインする 「技術者じゃない人の衛星への関わり方の例として…」に仮決定。
●クラウドファンディング返礼品用の音楽2曲が完成間近。曲を聴いて、オープニングスライドショーを作ることに決定。
●2025年春に向けて、QSLカードデザイン検討。
●Tシャツ、クラウドファンディング用フライヤー制作進行中。

X系(外部公開)

●某TV局の取材対応。予定よりかなりの長時間となる。
●「RSP-03技術講演会」の日程確定、発表内容の調整を各系と開始。
●打ち上げに向けて、リーマンサット外部の方との広報プロジェクトを複数企画、並行して進行。
●ジャズフェスティバル、ロケット交流会、産業ときめきフェア、リーマンサット10周年イベントへの出展準備開始。

F系(ファンディング)

●リーマンサット・プロジェクトグッズショップ ( rymansat )のオリジナルアイテム通販 ∞ SUZURI(スズリ)https://suzuri.jp/rymansathttps://suzuri.jp/rymansat

公開開始。バンダナ・Tシャツ他販売中。秋に向けて早くもアイテム刷新を計画。

●クラウドファンディングのTODOリストを作成。
●ハモるんアクスタ作成開始(下期が忙しくなるのを見越して早めの対応)。
●ハモるん音頭などのクラウドファンディング返礼品用音楽をお披露目。
●非アクティブ層リーチへの策を練る。

RSP-03特設サイトチーム(03サイト)

追跡ページについて、8/9発売のトランジスタ技術2024年9月号に掲載された(リーマンサットメンバーが寄稿)。

エレキ系

●ハーネスモデルから昇格したEMをさらにアップデート。磁気トルカ、デザインワッシャーを追加し、より実機に近づけた。
●電源を入れれば動くため、展示イベントにも使用可能な状態に!

デザインワッシャーがついたEM。

側面をアクリル板にして中が見えるようにしてみた。

総括

2024年8月は、各系が機能の完成を急ぎながら、FMでの本格的な統合試験に向けた準備を進める濃密な1か月となりました。

ハモるんとは

ハモるんは超小型人工衛星「RSP-03」の愛称です。
サイズはなんと、手のひらサイズの約10センチ四方の立方体!
この小さな衛星が行うミッションのコンセプトは「星のシンフォニー(Stellar Symphony )」です。
地球を周回しながら、「宇宙空間で撮影した星の画像」と「衛星のハウスキーピングデータ(衛星の各パーツの状態を表す数値)」から多彩な音楽を作曲し、その音楽データを地上に送ります。
ハモるんについてもっともっと詳しく知りたい方は、RSP-03専用サイト「HAMORUN!」をご覧ください。

”系”とは

リーマンサットでは、二つの意味で「系」という言葉を使っています。
①何らかの機能を持つ仕組みのこと。
②衛星開発プロジェクトを行うために、機能や役割ごとに技術部内で分かれているグループのこと。
ハモるんでは、ミッション系や姿勢制御系、地上局系など、現在10+α のグループに分かれて開発を行っています。このグループを”系”と呼んでいます。

以上、2024年8月の開発進捗でした。
次回のハモるん開発記もお楽しみに!

2025年7月、ミニ音楽会やります

※当レポは2024年の話ですが、音楽会は2025年の話です!
2025年7月21日(月・祝)、門前仲町にて『ハモるんミニ音楽会』を開催します。
詳細はコチラ
ピアノ奏者の岡野勇仁氏を迎え、『 ハモるん』をテーマに、カバー曲あり、人工衛星作曲(!)のオリジナル曲ありの多彩な演奏をお届けします。
また、リーマンサットならではの取り組みとして、演奏前に衛星開発メンバーが衛星開発や宇宙開発の魅力もお伝えします。
お席が残り少なくなっております。お問い合わせはお早めに!
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宇宙開発したい皆さん、一緒に何か企てませんか?リーマンサットが気になったかたはこちらまでどうぞ。

参加する


開発メンバー、広報として一緒に盛り上げていくメンバーも随時募集中です。



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