リーマンサットRSP-03開発メンバーのMです。
放射線試験の話、3回目は商用衛星・ロケットに使われている放射線対策済み部品の例を紹介したいと思います。

連載目次

第1回 人工衛星と放射線の影響の歴史
第2回 放射線対策の研究動向
第3回 商用衛星・ロケットの放射線対策
第4回 リーマンサットの衛星の放射線対策
第5回 リーマンサットの放射線試験結果

※RSP-03で放射線試験を行うにあたって、各種文献をもとに調べたことを備忘録的に記しています。
内容が100%正確である保証は出来ませんので、あらかじめご了承ください。

第3回 商用衛星・ロケットの放射線対策

最近NASAの『アルテミス1号』の打ち上げがニュースになっていましたが、このような商用のロケットや人工衛星には放射線耐性を強化した専用設計の部品が使われています。

ルネサスエレクトロニクスのニュースリリースより
https://www.renesas.com/jp/ja/about/press-room/hundreds-renesas-intersil-brand-radiation-hardened-ics-lift-onboard-artemis-1-mission-moon

こちらは大手半導体メーカー、ルネサスエレクトロニクスの製品ですが、JAXAでも宇宙用半導体を自前で開発していたりします。
https://www.isas.jaxa.jp/feature/forefront/210729.html

こちらの製品は、一般的な半導体に使われるシリコンウェハと異なり、SOI(Silicon On Insulator)という特殊な構造のシリコンウェハを使っています。通常のシリコンウェハとSOIウェハの構造の違いついては、東芝デバイス&ストレージ社の比較図がわかりやすいので、興味がある方はご覧になってみてください。
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/faq/linear_high-voltage-ipds/high-voltage02.html

こういった製品には、各国の研究機関が何十年もかけて得たノウハウが詰め込まれており、実際の宇宙機での動作実績もあるので非常に信頼性が高いのですが、私たちリーマンサットのような趣味の団体が使うには難しい面があります。

・そもそも買えない (JAXAや三菱重工、NEC等の昔から実績のある組織としか取引していない)
・買えたとしても非常に高価。何千万台も生産されるスマートフォンや家電と違って、量産されても数十台(スペースXでも百台オーダー)なので部品1つ当たりの価格が非常に高くなる。以前業界関係者に聞いた話だと、一般向けに100円程度で売っている部品でも宇宙向け仕様で製造すると数十万円くらいになってしまうとか。

…宇宙用の放射線対策された部品を趣味で使うのはなかなか難しそうですね。
なのでリーマンサットでは秋葉原で普通に売っているような部品を工夫して使っています。
詳細については次回をお待ちください!
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https://www.rymansat.com/join
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【この記事を書いたメンバー】

技術部 RSP-03 C系 / 電源系  M

旅とお酒が好きなエンジニア。東京在住、心は関西人


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