リーマンサットRSP-03開発メンバーのMです。
前回に引き続き、2回目の人工衛星と放射線の話をしたいと思います。
今回は半導体の放射線対策の研究動向の話です。

連載目次

第1回 人工衛星と放射線の影響の歴史
第2回 放射線対策の研究動向
第3回 商用衛星・ロケットの放射線対策
第4回 リーマンサットの衛星の放射線対策
第5回 リーマンサットの放射線試験結果

※RSP-03で放射線試験を行うにあたって、各種文献をもとに調べたことを備忘録的に記しています。
内容が100%正確である保証は出来ませんので、あらかじめご了承ください。

第2回 放射線対策の研究動向

放射線が電子機器に与える影響について1970年代から研究が進んだという話を書きましたが、具体的な対策はどういうことが議論されているのでしょうか?

半導体の放射線耐性を強くする研究は世界中で行われており、その成果は学会や論文で発表されています。
有名なところだと、半導体デバイスの信頼性技術に関する世界最大の国際会議「国際信頼性物理シンポジウム(IRPS:International Reliability Physics Symposium)https://www.irps.org/」があります。


このような学会で発表された論文は、有料で記事を購読しないといけないのですが、幸いなことに日本語で読める解説を福田昭さんがPC Watchに寄稿されています。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/754358.html
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/529947.html
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/365746.html
また、IRPSの記事自体は有料なのですが、プログラムはだれでも無料で参照できるので学会に投稿している企業や研究機関、大学の研究室を調べてホームページから技術情報や論文を参照することもできます。

これらの情報をまとめると、半導体の放射線耐性は回路内のデータが変動しても問題が起きないようにエラー訂正機能を追加したり、回路を2重化・3重化して冗長性を持たせる、原理的にソフトエラーが起きにくいようにフリップフロップの構成を工夫するといった回路的なアプローチと、半導体の素材そのものを一般的なシリコン基板から放射線耐性が高いものに置き換えるアプローチの2種類に大別されそうです。

詳しくは次回の記事で紹介したいと思いますが、商用衛星にはこれらの放射線対策技術がふんだんに盛り込まれているのです。
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【この記事を書いたメンバー】

技術部 RSP-03 C系 / 電源系  M

旅とお酒が好きなエンジニア。東京在住、心は関西人


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