リーマンサット・プロジェクトに、アクセルスペース 宮下さんが遊びに来た!

超小型衛星技術のパイオニアとして”宇宙ビジネス”の先頭に立つアクセルスペースさんと、超小型衛星開発に”素人の趣味”として割とガチで取り組んでいるリーマンサット。

同じ人工衛星を開発する立場ながらも、異なるスタンスで宇宙開発に関わる両者。「宇宙開発は趣味」と言い切るリーマンサットについて、宇宙ビジネスの最前線を突き進む新進気鋭のベンチャー企業でCTOを務める宮下さんが感じたこととは?

以下、アクセルスペース宮下さん、リーマンサットの大谷・柳田の対談形式でお届けします。


宮下 直己さん
株式会社アクセルスペース 取締役 最高技術責任者(CTO)
1978年、長野県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科機械宇宙システム専攻博士課程修了。在学中、超小型衛星CUTE-I, Cute-1.7 + APDの開発に携わった。卒業後、準備期間を経て2008年にアクセルスペースを設立。
アクセルスペースのホームページはこちら

 


 

 なぜ、リーマンサットの定例ミーティングに?

大谷:本日はリーマンサットの定例ミーティングに遊びに来ていただきありがとうございます。

宮下:こちらこそありがとうございます。実は、リーマンサットという存在自体は数年前から知っていました。”サラリーマン”と衛星を意味する”サット”を合わせてリーマンサットという、すごくキャッチーでいい名前してるなぁと思ったりしていて(笑)一度どんな様子か覗いてみたいと思っていたんですよ。

大谷:”なんだこのふざけた団体は!”って思われてそうで怖いんですが(笑)まず、今日はどんなきっかけでリーマンサットの定例ミーティングにいらしたんですか?

リーマンサット 大谷

宮下:定例ミーティングに行ってみようと思った理由は二つあって、一つ目は「どういう人たちがやっているのかな」っていうのに興味があったということ。私のイメージは、少数のギーク(=ものすごいオタク)な人たちが、自分の専門分野を活かして、週末や仕事の合間に宇宙開発をしている、というのがあって、実際どうなのかな?と思っていたのが一つ。

二つ目は「人工衛星を打ち上げたという実績がある」ということ。2018年9月に人工衛星 RSP-00が打ち上がったじゃないですか。

私の中では「そこ(打ち上げの達成)まで行くか行かないか」で結構違いがあると思うので、「本当に開発した人工衛星が打ち上がった」という話を聞いて、「それは是非コンタクトをしてみたいな」と思い、連絡させてもらいました。

柳田:Facebookでご連絡をいただいた際、リーマンサットの広報担当が塩対応(*1)をしてしまったそうで、失礼しました。

宮下:大丈夫です(笑)

*1:広報部メンバーで「アクセルスペースのCTOの人から連絡きた・・・!どうする、これ?」となり、対応に困惑した結果、返信がものすごくそっけなくなった話。

 

 「自分が好きなものを追い求める」のはすごいこと

柳田:実際、リーマンサットの定例ミーティングをご覧になって、どんな感想を持たれましたか??

リーマンサット 柳田

宮下:まず、こんなに大規模(メンバー数500人以上)になっていることにびっくりしました!今日の定例ミーティングにも80人前後来ているということで、言葉が悪いかもしれませんが、いい感じのむさくるしさ」がありましたね(笑)

私は、株式会社ウェザーニューズの創業者 故石橋さんがおっしゃっていた言葉で、全てのプロジェクトが「How wonderful!(なんて素晴らしいんだ!)」から始めなくちゃいけないと思っています。最初から「How much?(それって儲かるの?)」 と言われるプロジェクトよりも「お、それ、面白いね!」となるような、ワクワクするようなものじゃないと続かないんじゃないかと。

先ほど、定例ミーティングで時間をいただいて、アクセルスペースについてのプレゼンをしたときに、メンバーの方々が本当に熱心に質問してきたのを見ていて「あ、これは好きな人たちがやっているんだな」と思いました。

「自分が好きなものを追い求める」ことって、やっぱり理由なくすごいことじゃないですか。

週末に休んだり遊びに行かずに宇宙開発するって・・・普通に考えたらすごいことですよね。リーマンサット的にはこの宇宙開発が「遊び」なのかもしれませんけど(笑)

大谷:アクセルスペースさんでもそういう想いを大切にしているんですか?

宮下:そうですね。先ほどのプレゼンで話をした「アクセルグローブ(*2)」も、「誰よりもまず私自身が使いたいサービスであること」というのは大きいですね。

宇宙から地球を撮影し続けることで、30年後には火山の予報なんか余裕でできている、もしかしたら地震の予兆もつかめるかもしれない。

「これをやったら絶対に世の中変わるじゃん」って思うんですよ。

そういうことを考えたときに、なんていうんですかね、やっぱり何よりも「自分が作りたいものを作る」って言うのが一番の原動力だと思います。

リーマンサットでいうと、わざわざ週末に集まって活動している人たちというのはそういう想いを持っていると思いますし、それって「あついなぁーー!」って思います。

*2:アクセルスペースが人工衛星50機を打ち上げ宇宙から地球を撮影し続けることで、世界中どの場所でも毎日画像データを提供できるインフラを整えるという計画

 

 技術は重要だけど、営業や広報も大切

大谷:先ほど、リーマンサットのことは数年前から知っていたというお話がありましたが、宮下さんが普段気になるのはどんな企業や団体ですか?

宮下:仕事柄、もちろん技術は気になりますが、技術だけじゃなくて営業や広報も手を抜かずにやっているところはとても気になりますね。すごく重要なことだと思うので。

アクセルスペース 宮下さん

広報という意味で最近興味があるのは「アイサイ(ICEYE)」という会社ですね。

フィンランドの人工衛星開発スタートアップで、合成開口レーダ(SAR *3)を搭載した小型衛星(質量100kg以下)を開発しています。

アクセルスペースも質量100kg以下クラスの小型衛星で、光学(オプティカル)カメラによる地球観測をやっていることもあって、良きライバルの一社だと思っています。

アイサイはWEBの魅せ方もめちゃくちゃかっこいいですし、技術の高いものを持っていて、いい会社だなって思いますね。

*3:電波(マイクロ波)を使い観測する方法で、雲があったり暗い場所でも観測できるメリットがある。一方デメリットとして、電波で観測するため観測された画像が理解しづらいものとなる。

大谷:技術以外の役割の大切さ、というのは創業時から意識されていたんですか?

宮下:いえ、そこが我々は最初は苦手だったんですよね。もともと、アクセルスペースがエンジニア三人作った会社だったので。経営の「け」の字も知らないし、広報も営業も「・・・?」という感じで。

「良いものを作っていれば売れる。誰がやっても売れる」と当初は思っていたんですが、やっぱり広報やマーケティング、営業がちゃんと魅せていかなければいけない。技術と広報や営業の両輪をまわしていくことが本当に大事だと思うようになりました。

大谷:そのように思うようになったきっかけや、エピソードはありますか?

宮下:例えば、アクセルスペースの話でいくと、ウェザーニュースさんと共同開発した気象・海象観測超小型衛星「WNISAT-1R」の話があります。

この衛星は光学カメラによる気象・海象観測によって、船会社に最適な航路情報の提供につなげることを目的に開発しましたが、例えば「最適な北極海航路の提案による船の燃料費削減」なんて、人工衛星だけ作っていても絶対気づかない領域なんですよ。そもそも「北極海の氷が溶けたら船が通れる」という話なんて業界の人じゃないと誰も知らないじゃないですか。

そう考えると「技術バカ」ってだけでは技術と問題解決の間に接点が生まれないですよね。営業が「こんな課題を持っている会社を見つけたんだけど、うちの技術で解決できないかな」と持ってきてくれるからこそ接点が生まれる。

「何ができるか」と「何を考えているか」を発信していかないと、どんなにいい技術を持っていても会社は潰れていくと思います。

なのでうちのエンジニアには営業チームをリスペクトしろ、といつも言ってますね。

大谷:逆もしかりですよね。営業チームもエンジニアをリスペクトしないと。本業で営業をやっているので、宮下さんの考え方、すごく刺さりました(笑)

 

 異分野の人たちが集まることで1+1は2以上になるはず

柳田:技術だけじゃダメだよね、というお話でしたが、その観点でリーマンサットを見たときにどんなイメージを持たれていますか?

宮下:リーマンサットは「いつもこの青色がいいなー」っていうのを思っています(笑)

柳田:何か褒めてもらえることを少し期待して聞いてみたんですが、まさかの「青色」ですか?(笑)

宮下:つまり、広報やブランディングがうまくいっているんじゃないかと。
ロゴマークだとかWEBページをしっかりさせて、定期的に旬な情報発信も行っている。しっかりしているなぁと。

柳田:ありがとうございます。褒めてもらえて嬉しいです(笑)次にリーマンサットの技術開発に関してはどんな印象を持たれていますか?

宮下:技術に関して言えば、メンバーのバックグラウンドが多彩だなぁと思います。先ほど(定例ミーティングにて)名刺をいただいた方は某電機メーカーで本当に通信をやっている方だったり。

ある意味では、宇宙開発って遅れてるなぁって思うところもあるんですよ。失敗が許されない、一発で必ず動かさないといけないという特殊で高度なシステムエンジニアリングではあるものの、開発から打上げまで2、3年は平気でかかる。すごいゆっくりなサイクルで、遅いじゃないですか。

要素技術だけを切り取ってみると、うちら(宇宙業界)の方が遅れてる部分はあると思っています。

例えば、通信に関しては通信業界の方が絶対進んでいるし、安全とか冗長化みたいな話なら、例えば自動車業界のブレーキシステムの考え方の方が進んでいると思ってます。自動車は多くの人の命がかかっているわけで、すごくシビアに開発・テストされていて、相当なノウハウや技術がたまっていると思うんですね。そういう他分野の最先端技術は宇宙開発に絶対取り入れなくちゃいけない。

実は、アクセルスペースの採用もそうなんですけど、最近は宇宙工学バックグラウンドの人をあまり採ってないんですよ。

それよりも何らかの専門分野、例えば電気回路なら電気回路、通信なら通信の領域で多くの経験を持っている方が我々のところに来てくれれば「1+1=2以上の効果」が生まれるんじゃないかなと思っています。

リーマンサットの話に戻ると、実は宇宙開発以外で何らかの専門分野を持っている人たちが集まることで、いま言ったような「1+1=2以上の効果」が、リーマンサットでは自然に起きてるんじゃないかなと思います。WEBサイトのJoinページ(リーマンサットのメンバー募集のページ)を見てみたんですが、この書き方をすると、「宇宙工学畑じゃない人たちが宇宙の領域でやばいことを引き起こすんじゃないかな」っていう、いい意味での期待感を持っています(笑)

つまり、異分野の技術や文化が混じったほうが宇宙開発を加速させるんじゃないかと最近思っていて、そういう場であるところ自体がリーマンサットのいいところですね。

 

 「好き勝手できる」リーマンサットがうらやましい!

柳田:最後にリーマンサットのメンバーに温かいメッセージをお願いします!

宮下:皆さんの「自分がやりたいから作る」という想いは、正直、技術力以上に大事なものだと思ってます。

ものづくりは失敗の連続。数々の失敗を乗り越える原動力は「やりたい」という想いです。

「分野は違うけれども、宇宙開発をやりたい。関わりたい。」という想いを持って、今のリーマンサットの皆さんは過去に一歩を踏み出して、このリーマンサットの場を訪れたと思います。その想い、そして力を世に広めて欲しい。そのパッション(情熱)で宇宙業界を広げて欲しい。心からそう思います。

大谷:その原動力が、この団体を作りましたね。

宮下:アクセルスペースもその想いをとても大切にしていて、アクセルグローブでは「常に自分が使いたいもの」を作ろうとしています。

それと・・・正直リーマンサットを見ていてうらやましいなと思うのは「好き勝手できる」こと!ですね(笑)

柳田:好き勝手過ぎてハチャメチャなことはよくありますけどね(笑)

宮下:例えばアクセルスペースでやるJAXAさんの案件。これはやはりプレッシャーがすごい。もちろんプレッシャーも含めて楽しいし、大手重工ではなく我々のようなベンチャーがJAXAさんの案件を手がけて成功させるというインパクトや意義は大きい。当然ですがやりがいもあります。ただ、さすがにこういった案件では、全てアクセルスペース流だけではできませんからね(笑)

大谷:「楽しさ」というワードが出ましたが、気軽な「楽しさ」と、やりきった先の「愉しさ」ってあるじゃないですか。

リーマンサットは「趣味で宇宙開発」とは言っているものの、「楽しむ」だけではなく、みんなでしんどい思いもしながらやり遂げる「愉しさ」を大切にする団体でありたいとは常に思っています。

宮下:あとは、やっぱり宇宙開発に関わるメンバーみんなに打上げを観て欲しいですよね。あれは理屈じゃない。細胞がざわざわするんですよ(笑)

あの感覚って「本読んですごいと思った」とかいうレベルじゃない。「これすげーー!」って心の底から、細胞レベルで思える。ロケットの打上げでは何度見てもそういう感覚を得ることができるんですよね。

大谷:僕は2018年9月のRSP-00の打上げが初めてだったんですけど、

自分が関与したものがものすごい爆音で宇宙に上がっていくというのが、今までに無い感動でしたね。

宮下:こういう経験によって日ごろの努力も報われると思うので、ぜひ経験して欲しいですよね。宇宙開発って実際は苦しいときも多いですから。毎回開発が終わる度に「二度とやるか!」って思いますし(笑)

いや、まぁそれはそれで楽しいんですけどね。

生みの苦しみも打上げを見れば報われますので。

大谷・柳田:ざっくばらんに色々なお話をしていただき、ありがとうございました!

 


宮下さん、今回はありがとうございました!
宇宙ビジネスのパイオニアであるアクセルスペースさんとの対談は、本当に刺激的でした!
5周年を迎えるリーマンサットですが、これからも走り続けていきます!
(文=後藤 悠)


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