はじめまして。技術広報 すみ♪ です!

宇宙に関する知識も経験もなにもないまま、空を見上げるのが好き、宇宙のことを知りたいという気持ちだけでリーマンサット・プロジェクトに入ってから早半年。
すこーしずつ勉強して自分にできることを増やしていこう、その過程を楽しもう、趣味だから自分のペースでぼちぼち・・・のはずが気がついたら生活の中でリーマンサットの占める割合が日に日に増えてくるのを感じる今日この頃です。

今回は今年三月に行われた、現在開発中の人工衛星RSP-02の放射線試験について、リーマンサットの技術メンバー(RSP-02 開発プロジェクト)の方々からお伺いした内容をお伝えします。

放射線試験について

試験の内容についての話の前に、そもそも放射線試験とはどんな試験なのか、なぜ必要なのか、というところから教わりました。

宇宙空間に存在する宇宙放射線はヒトに対し有害ですが、人工衛星の頭脳といえるCPUやメモリに使われる半導体などにも影響し故障の原因となる可能性があるそうです。
私たちが生活する地上ではヒトもモノも大気や磁界によって宇宙放射線から守られていますが、宇宙空間ではそれらがないため人工衛星は宇宙放射線にさらされることになります。
しかしいったん宇宙空間に放出された人工衛星は修理が困難なため、宇宙放射線に対し耐性のある部品選定や、劣化を防ぐための対策が求められます。

放射線の電子部品への影響はどのようなものがあるのでしょうか。
影響の種類は大きく分けてトータルドーズ効果シングルイベント効果の2つあるそうです。
トータルドーズは放射線の累積によって電子部品が劣化する事象、シングルイベントは高エネルギーの粒子が当たることで誤動作を起こす事象です。
今回の放射線試験では前者のトータルドーズ効果に対する耐性試験が行われました。

放射線試験に行ってきた

ここからは実際の放射線試験の様子をお伝えします。
試験には東京工業大学にあるコバルト照射施設を使用させていただきました。

実験棟入口

今回の放射線試験では主に部品の放射線耐性を調べることを目的としました。通信モジュール、ICチップ、カメラ、SDカードというような部品ごとの照射になります。

 

実験室の中 その1

中央の円筒内部に放射線源があります。台座の上に電子機器を設置しますが、放射線源からの距離で照射量を調整します。黄色の窓の向こう側から観測できます。

 

実験室の中 その2

ところ狭しと部品が並べられています。モジュールやセンサ以外の部位には鉛板でシールドを施して単体で試験は行われています。

 

モニタリングするPC

照射中も対象機器は動作を継続させ、PCでモニターします。PCと放射線源の間に鉛ブロックを設置することでPCを保護しています。

放射線量は放射線源からの距離で調整を行いますが、実際に軌道上に放出されてからの運用を想定して放射線量の計算をする必要があります。この計算された放射線量を一気に照射する加速試験を行っていきます。

運用を想定するというところでは、RSP-02のミッションが深く関わってきます。
RSP-02は「世界初の ”人工星座” 放出衛星プロジェクト」というミッションコンセプトをもっています。親衛星から宇宙空間に子衛星が展開され、親衛星-子衛星間、子衛星同士の通信を行います。親衛星からの通信で子衛星のLEDが光り人工星座を作り出すのです。

RSP-02 イメージビジュアル

親衛星は筐体にアルミニウムが使用されているため放射線を大幅に減衰させることが期待できます。しかし子衛星は、内部の機構が透き通って見えるデザインで考えているため、親衛星のようにアルミニウムで覆われる部分が少なく、筐体の放射線耐性がより求められます。
また想定される宇宙空間での露出期間も親衛星と子衛星では異なっています。子衛星は親衛星の中に格納されていて、半年後に宇宙空間に展開されるからです。
このような条件により放射線試験では親衛星と子衛星のそれぞれのケースで放射線量を算出します。

放射線試験の結果

試験結果ですが
・SDカード内のデータには破損は認められませんでした。
・しかし、一部通信用の LoRaモジュールや温度センサには異常が確認されました。
LoRaは少ない出力での長距離通信を可能にする技術で、前述の子衛星の通信に用いられる予定です。
今回は検討中の2種類のLoRaモジュールについて試験を行いましたが、書き込んだプログラムが正常に動作しないなど、実験後の動作確認で異常が確認されました。
試験後、対策としてはLoRaモジュールについては基板にシールドを搭載することを検討、また温度センサについては部品の再選定が行われました。

ミッションを行うためのカメラについては本体に故障はないものの照射中の撮影画像に変化があったため、画像情報に誤りが発生した際のエラーチェックなどソフトウェア面での対応も検討されています。

放射線の影響で色見の変化が起こったカメラ画像

次回放射線試験では、対策を施した上で基板実装済みのものに放射線を照射することになるそうです。

放射線試験こぼれ話

技術メンバーへのインタビューではこんなエピソードも。

試験当日の朝、メンバーの集合のときのことです。
試験を行う部品の用意がギリギリになったため、持ち込むメンバーへの引き渡しに郵便局留めを利用したところ、荷物がなかなか見つからず待ち合わせ時間に遅れる事態に。
もし見つからなかったら今日一日棒に振ることになるのか・・・と担当者は生きた心地がしなかったそうです。
でも待ち合わせ場所で待っているメンバーは意外にのんびり構えていたそうで・・・
これは、メンバー間の信頼の証でしょうか!?

放射線試験の目的や結果について学ぶことで、RSP-02のつくりにも少し理解が深まりました。
親衛星と子衛星で作り出す星座・・・とてもロマンチックですがそれを実現する技術について勉強していきたいです。
最後までお読みいただきありがとうございました☆

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【この記事を書いたメンバー】

広報部 技術広報課 すみ♪
趣味はエレクトーンと洋裁。
ここに宇宙開発と書けるようにがんばります。


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