宇宙機にデザインを施すときに気を付けることは何でしょう?

宇宙空間という過酷な環境の中で、デザインの自由は限られています。
その制約の中で、どのように表現することが可能でしょうか?

宇宙機とアートを掛け合わせた、手のひらサイズの超小型人工衛星「RSP-03」。
デザインチームはどのようにデザインの自由と機能の両立を図ったのでしょうか。

ミリ単位の世界でデザインする

CubeSATの構造には厳格な物理的制約が存在します。
全体のサイズはレール長113.5mm、幅は100mm。
しかも突起の許容範囲は6.5mm以内、シャープエッジや穴のサイズにも厳しい基準が設けられています。

理由は明快です。
国際宇宙ステーション(ISS)に乗せる以上、安全性が最優先されます。

ISSクルーの損傷を防ぐため、例えば、鋭利な角は0.7mm以上の面取りが必要で、外観に開ける穴は指が引っかからないサイズ(10mm以下または25mm以上)でなければなりません。
これらの制限は、デザインという自由な行為に明確な「枠」を設けます。
しかし、逆に言えば、この「枠」の中でどれだけ表現できるかが、デザインの面白いところでもあります。

この「枠」は「JEMペイロードアコモデーションハンドブック- Vol. 8 -超小型衛星放出インタフェース管理仕様書」に記載されています。

これはJAXAが定めている宇宙関連の仕様書です。
打ち上げ時の振動とISSからの放出に備えたレールや全体の寸法、スイッチ位置やセパレーションスプリングに関する規定、また収納状態における衛星の稼働を防止するための安全設計に関する規定が記載されています。

アルミ板に絵を描く

RSP-03の外装にはアルミ板が使用されています。
RSP-03は、そこに色をつけ、レーザーで線画を刻むという手法を取りました。
「カラーアルマイト処理」と呼ばれる技術です。
表面に着色したアルミ板をレーザーで削ることで、下地のグレーが浮かび上がります。
“削ることで描く”手法です。
色の選択には自由度があり、青、黄色、緑など選ぶことができます。
ただし、パーツごとに単色であることが前提です。
デジタルアートのようなフルカラー印刷は不可能ですが、この「制約」がむしろデザインに「宇宙らしい」洗練された美しさを与えているのではないでしょうか。

RSP-03の外装です。
レーザー処理された箇所は必ず母材のグレーの色になります。

電子基板がキャンバスとなる

RSP-03は太陽電池が乗る基板にも意匠を施しました。
ここには「シルク印刷」という手法を用いて文字やマークを印字できます。
もちろん、あまりにも細かい模様は再現できませんが、ロゴや記念的な図柄なら十分に表現可能です。
色も選べるため、プロジェクトのシンボルやメッセージをさりげなく宇宙へ送り出すことができます。

RSP-01とRSP-03の太陽光パネル。
隙間に印字しています。


内部の基板にもデザインを。

「ワッシャー」をデザインに変える

機能部品にもデザインの余地はあります。
例えば、ネジの締結に使われる「ワッシャー(座金)」。
RSP-03では、これを「デザインワッシャー」として活用しました。
構造的に意味はありませんが、あえてデザインのために作られたワッシャーの誕生です。


アクセントのある赤色カラーアルマイトで製作しました。
カラーや形状に変化をつけ、まるでアクセサリーのように装飾的要素を取り入れています。
リーマンサットでは行いませんでしたが、印字や彫刻といった応用も可能です。
無機質な機械部品が一転、デザインの主役級に躍り出ることができます。

宇宙機のデザインの可能性

宇宙は究極の制限空間です。
でも、そこにもデザインの可能性があります。

単なる装飾を越えて、デザインの自由と機能の両立を実現した衛星「RSP-03」。
「”星を音楽にして地上に届ける”というミッションを衛星のデザインで表現する」という世界初の試みに挑戦しました。

皆さんも、ぜひ宇宙機のデザインに挑戦してみてください!

原案:塩入(編集・構成:トモエ モエ、検討にChatGPT使用)


【この記事を書いたメンバー】

RPS-03 構造系およびデザイン系 塩入
最近は漬物作りにハマってます

 


【この記事を書いたメンバー】

広報部 オウンドメディア課 トモエ モエ
リーマンサットCBO(C:最高 B:ビール O:責任者)
好物はビールと焼肉

✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰✰
宇宙開発したい皆さん、一緒に何か企てませんか?リーマンサットが気になったかたはこちらまでどうぞ。
リーマンサットに興味がある方はこちら
開発メンバー、広報として一緒に盛り上げていくメンバーも随時募集中です


他にこんな記事も読まれています
宇宙からあなたへ届け!デジトーカとSSTV(ハモるん開発記) こんにちは、超小型衛星RSP-03チームです。 「ハモるん開発記」では、リーマンサットでの衛星開発がどのように行われているのかを、「ハモるん」こと超小型衛星R...
ハモるん開発記:超小型衛星RSP-03進捗2024年1月 こんにちは、超小型衛星RSP-03チームです。 「ハモるん開発記」では、リーマンサットでの衛星開発がどのように行われているのかを、ハモるんことRSP-03の開...
ハモるん開発記:超小型衛星RSP-03進捗2023年10月 こんにちは、超小型衛星RSP-03チームです。 「ハモるん開発記」では、リーマンサットでの衛星開発がどのように行われているのかを、ハモるんことRSP-03の開...