宇宙で作曲する人工衛星「ハモるん」こと超小型人工衛星RSP-03。
「趣味は宇宙開発」リーマンサットにおいて、ハモるんをどのように創り上げてきたか――衛星運用前に、育ての親たちにじっくり語っていただきます。
<Interview & Text: ホソダトモエ 広報部&RSP-03外部公開系>
それでは、衛星と地上をつなぐ「通信」の裏側を語るRSP-03 地上局系メンバー座談会、はじめます。
左から古川勇さん、村岡さん、おおつかさん、やまさきさん
プロフィール・参加のきっかけは?
――今日は超小型人工衛星RSP-03(ハモるん)の地上局(G系)メンバーの皆さんにお集まりいただきました! まずは簡単に自己紹介からお願いします。
おおつか:はい、おおつかです。SDRを使った無線送受信周りの実装、無線通信に興味があり2022年にRSPに加入しました。
古川勇:古川です。SatNOGS*デコーダ対応しました。アマチュア無線、衛星通信を楽しんでいたところリーマンサットの存在を知り、2025年6月に参加し、SatNOGSの対応をしました。
村岡:村岡です。Maker Faireでリーマンサットを知ったのがきっかけです。衛星開発の専門知識はあまりないんですけど、自分にできる範囲で担当しています。
やまさき:やまさきです。衛星側の通信ソフトウェアと、地上局のソフトウェアを作っています。いわゆる「つなぐ」役ですね。リーマンサットで活動する理由は、たくさんの人達と出会い、一緒に活動するのが楽しいからです!
RSP-03(ハモるん)って、どんな存在?
――みなさんにとって、RSP-03(ハモるん)はどんな存在ですか?
おおつか:プロジェクトとして知識の宝庫ですね。多種多様な業種の方が集まり、それぞれの知見が詰まった場所です。
古川勇:わたしにとって宇宙を身近に感じられた衛星、プロジェクト。知らないことばかりで大変興味深いです。
村岡:新たな発見の連続でした。
やまさき:僕は「共通の目標に向かって切磋琢磨できる場」。みんなで作り上げるって感覚が強いです。
どんなことを担当したの?
――それぞれの担当について教えてください。
おおつか:地上局系を担当しています。打ち上げた衛星と地上側で通信するための環境を構築していく系です。地上局系設備の構築(アンテナや無線機など)や運用で使用するソフトの実装、無線信号のソフト処理などを担当しています。地上局系は通信全般に関わる系なので、衛星が可視パスにいる間は常に信号の通り道となっています。
村岡:ミッション系と地上局の一部を担当しました。
やまさき:通信系と地上局系に所属し、衛星と地上間の無線通信の環境を用意しています。衛星と地上間の通信に必要な機器選定や制御、運用に必要なソフトウェアの開発を行っています。
地上局系は、通信の確立をすると共に、衛星の状態を確認しつつ、地上から衛星に対しコマンドを送信することで、衛星のミッションを開始させます。
TypeScript、Rust等のプログラム言語を使いました。
古川勇:僕はデコーダの対応をやりました。世界中のSatNOGS*ユーザーが超小型人工衛星RSP-03を受信できるように準備するのが役割です。
古川勇:左上がSatNOGSのデータベース入り口。右上が衛星からの音声を解読するプログラムの一部、左下が可視化するGrafanaというアプリケーション。右下がこれを観測する地上の人たちの面々です。
――使用したプログラム言語は?
やまさき:TypeScript、Rustです。
村岡:TypeScript、python等のプログラム言語を使いました。
RSP-01から03で変わったこと
――RSP-01の頃と比べて進化したところは?
村岡:直接担当はしてないんですけど、写真のダウンロード機能が改善されていると思います。
やまさき:通信速度を改善したのと、誤り訂正でデコード率が上がりましたね。より安定して運用できるようになったと思います。
--開発している中で、こだわった部分を教えてください。
やまさき:一つの運用画面内で運用が完結するようにしました。
衛星放出を前にした気持ち
――いよいよ放出も近いですが、不安や楽しみは?
古川勇:太陽活動が衛星に与える影響は心配です。お祈りするしかないですね。
やまさき:限られた運用期間の中でどれだけ効率よく進められるか。そこが勝負どころです。
--RSP-03(ハモるん)が宇宙に行った時、一番初めに、あなたの開発した個所は何を行いますか?
村岡:運用システムで衛星にコマンドを送る、写真撮影、撮影した画像の座標計算を行います。
やまさき:ビーコンの受信を行います。その後衛星にコマンドを送り、衛星の状況を確認します。
--RSP-03(ハモるん)が何をしてくれたら自分の中で大成功?
村岡:ミッションと関係なく宇宙の色んな写真を撮影できればいいなと思ってます。
やまさき:すべての通信モードが機能すれば嬉しいです。
開発の裏側~衛星ぶっちゃけ話!
--RSP-03(ハモるん)搭載のロケットの打ち上げが2回延びましたが、どう思いましたか?
やまさき:またか、、と思う反面、地上局としてやりたいことが残っていたためホッとしました。
--開発中に苦労したところは?
村岡:星座判定処理の動作確認で何度か市境の沼のほとりに行ったことです。
--開発に関わる中で、一番心躍ったのはどんな時でしたか?
やまさき:地上局のシステムと衛星の通信部分を担っていることもあって、開発時に地上局システムからのコマンドが衛星局に届き、各系を横断して処理された上で衛星から戻ってきた通信を地上局システムで受け取ることができた時が一番嬉しかったです!
--逆に開発中に辛かったこと、または現在進行形で辛いことはありますか?
村岡:放出前なのに機能の修正が必要になったことです。
やまさき:地上局設備の制御のデバッグが自宅でできないのが辛いです。
--いま一番心配なのはどこですか?
村岡:自分の担当箇所が動いてほしいです。
--RSP-03(ハモるん)にはどれくらい生きてほしいですか?
やまさき:年度内は再突入せずに動いていてほしいです。
--衛星放出の日はどこで何をしている予定ですか?
やまさき:最初の通信をわたしたちの地上局で受信したいと思います。
放出後はこんな風に楽しんで!
--衛星放出後、どう楽しんでもらいたいですか?
古川勇:SatNOGSで世界中のアマ衛星ファンの方に受信いただけると幸いです。自分自身も楽しみます。
やまさき:SatNOGSや03サイトなど、オンラインでも受信データの確認ができるので、技術者や自宅に設備のない人でも参加できるんです。少しでも身近に感じてもらえたら嬉しいです。
最後に、みなさんへメッセージをお願いします
村岡:この衛星が、みなさんの新しい発見や挑戦のきっかけになれば嬉しいです。
やまさき:ミッション達成に向けて運用していきます。応援よろしくお願いします!
アマチュア無線の受信報告はRSP-03専用サイト「HAMORUN!」*までお願いします!
*SatNOGSのRSP-03ページ :https://db.satnogs.org/satellite/SRYX-5008-9935-5872-7958
*「HAMORUN!」 :https://rsp03.rymansat.com/
--古川勇さん、村岡さん、おおつかさん、やまさきさん、ありがとうございました!次回の『趣味で人工衛星』インタビューはC&DH系。お楽しみに!
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地上局系についてもっと詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ!
#9 衛星を追跡せよ…地上局系の開発 ~超小型人工衛星RSP-03開発ウラ話14連発【RSP-03技術講演会】
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【この記事を書いたメンバー】
広報部 オウンドメディア課 &RSP-03外部公開系 トモエ モエ
リーマンサットCBO(C:最高 B:ビール O:責任者)
好物はビールと焼肉